触診が大切な理由

施術の質アップにつながる

お客様の体に触れたとき、
「ここは筋肉?それとも違う組織?脂肪?」
「左右差がある気がするけど、自信がない…」
「ゆがんでいるのが分かるけどどこが原因?」

と迷ったり疑問に思ったりすることがあると思います。

このような迷いを減らすためにも触診の力は大切です。触診は、目では見えない体の内側を、手の感覚でとらえることとも言えます。正しく触れて、情報を受け取れるようになると、施術の組み立てや声かけにも自信が持てるようになります。

「触診」というと難しそうに感じるかもしれませんが、実は少し意識を変えるだけで、ぐっとやりやすくなります。

触診のコツ

①筋肉よりも先に、まず骨の触診から

筋肉を触り分ける前に練習したいのが、骨の位置(=ランドマーク)を見つけることです。筋肉はすべて骨についています。「どこから(起始:きし)どこに(停止:ていし)ついているか」を把握することによって、正しく筋肉を触診でき、施術中に疑問に思っても後から確認することもできます。また、筋肉の起始停止を明確に知っておけば、セルフマッサージやセルフストレッチなどのアドバイスもとても簡単にできるようになります。

特に、筋肉がたくさん付着している部位や指標にしやすい骨は覚えておくのがおすすめです。
触れやすい部分には下記があります。

【頚部】

・乳様突起(にゅうようとっき):耳のうしろの骨
・鎖骨(さこつ)
・胸骨(きょうこつ)

【肩・上腕】

・肩峰(けんぽう)
・肩甲棘(けんこうきょく)
・烏口突起(うこうとっき)
・上腕骨大結節(だいけっせつ)

【前腕・手】

・外側、内側上顆
・橈骨、尺骨茎状突起

【体幹・骨盤】

・肋骨下縁
・上前腸骨棘(ASIS)
・上後腸骨棘(PSIS)

【大腿・下腿】

・大転子(だいてんし)
・膝蓋骨(しつがいこつ)
・脛骨粗面(けいこつそめん)

【足部】

・内果(ないか)/外果(がいか)
・距骨
・踵骨(しょうこつ

最初は自分の体で練習して、ランドマーク(骨の目印)を少しずつ増やしていくと安心です。

②ゆっくり触れる

勢いよく触れると相手の体が反応して筋肉が緊張してしまうことがあります。すると、本来の筋肉の状態よりも、硬く感じてしまうことがありため注意が必要です。それを「コリ」だと思ってしまうと、間違った判断につながります。

これは施術でも同じなので、慣れていらっしゃる方も多いと思いますが、「触診」や「身体の評価」と身構えると、触れ方が強くなってしまうこともあります。まずは、ゆっくり丁寧に触れることを意識するのがおすすめです。強く押すのではなく、抵抗が起こらないように、指先を沈めるような感覚で触れていくと、だんだん体の内側が見えてくるような感覚になります。

③境目を感じられるようになると幅が広がる

筋肉と筋肉、筋肉と靱帯などには境目があります。運動不足や血流不足などが続くと、癒着まではいかなくてもこの境目も組織同士がくっついた状態になっています。ここの境目もっ触れて分かるようになると、触診スキルも施術の幅も広がります。

まずは、太ももの前にある大腿四頭筋で練習するのがおすすめです。自分でも触ることができ、4つの筋肉が集まっているので、境目の練習にぴったりです。

・足を伸ばして座る
・太ももの前を軽く触れる
・内側と外側を比べながら、少しずつ指を動かして確認

触れていくと、中央の筋とその周りの筋のあいだに、少し質感が変わる部分や、溝のような感覚が見つかることがあります。

ポイントは、指を横方向(左右)にも縦方向(奥)にも動かしてみること。感触の変化に気づけると、筋肉の立体感が見えてきます。

まとめ

触診は特別なテクニックではなく、誰でも手の感覚で身につけていけるスキルです。「なんとなく触っていた」感覚から、「ここがこうなっている」と自信を持って伝えられる感覚へと変わっていきます。お客様の体を、もっとていねいに、もっと正確にとらえるために、ぜひ感覚に意識を向けてみてください。