体幹インナーマッスルまとめ

目次
1.インナーマッスルって?
インナーマッスルは、文字通り体の内側の筋肉のことです。反対語はアウターマッスル。
五十肩も、野球少年が肩を壊してしまうのも、肩のインナーマッスルをうまく使えずに、外側のアウターばかり使ってしまった結果であることも多いです。
インナーマッスルは、体の奥で姿勢や動作をコントロールする深層筋群のこと。
特に腹横筋・多裂筋・骨盤底筋群・横隔膜の4つは「体幹の安定ユニット」と呼ばれることもあり、姿勢・体型・不調に直結します。
この4つの働きを理解すると、施術やアドバイスの説得力を高め、結果を出しやすくする重要な鍵になることも多くある大切な部位。
今回は、この4つの筋肉の位置や役割を一つずつ解説しますね。
2.腹横筋
◆ 腹横筋の位置
お腹の筋肉の中で最も深層の筋です。筋の繊維は横方向に走っていて、背中側の「胸腰筋膜」へとつながっています。
お腹全体を包み込む、大きめの腹巻みたいなイメージ。
上は肋骨、下は骨盤までついています。
お腹周りの筋肉は、深部から腹横筋→内腹斜筋→外腹斜筋→腹直筋となります。
腹筋の中では、面積が一番広い筋肉です。

◆ どんな働きをする?
インナーマッスルなので、もちろんお腹の「安定性」に関わっているのですが、部位によって、
- 上の部分:胸郭の安定性
- 中部部分:腰椎を安定性
- 下の部分:骨盤(特に仙腸関節)の安定性
に関わっています。
腹横筋は、単純にいうと「お腹を凹ます時」に働く筋肉です。
呼吸にも関与していてり、腹圧を安定させて姿勢を保つ役割もあります。その位置や働きから「天然のコルセット」という人もいます。
◆ 腹横筋がうまく働かないと?
- ウエストラインがなくなる
腹斜筋との連携がくずれて、内側に引き締められなくなると、ウエストラインがなくなります。
また、本来腹横筋が動くと肋骨が内側と下の方向に動きますが、腹横筋がうまく働かないと肋骨が外に開いたまま固まってしまう場合もあります。これが、いわゆる「寸胴体型」をつくります。
- ぽっこりお腹・反り腰になる
腹圧が保てなくなると、腰を支える力が不足し、背中側の筋肉が硬く強くなり、腰が前に反りやすくなります。そうすると、お腹が前にでてぽっこりお腹にもつながります。
逆に、反り腰になっている方は、腹横筋が使いにくい、とも言えます。
◆ アプローチ
腹横筋は深層筋なので、直接触って感じることはなかなか難しい筋肉です。表層の腹筋群との連動しているため、表層の腹筋群を緩めたり働きやすくすることで、間接的に腹横筋を働きやすくすることができます。
また、肋骨が開いていたり、骨盤が前傾している場合には、腹横筋はうまく働かず、腹圧が保てなくなります。
そのため、肋骨や骨盤の位置を整えることで自然に使いやすくなります。
3.多裂筋
◆ 多裂筋の位置
脊椎の深層と骨盤の仙骨についている筋肉です。
脊椎の後ろ側・横側の突起や仙骨から上斜めに細かく伸び、背骨を丁寧に斜めに結び付けているような走向をしています。

◆ どんな働きをする?
多裂筋は細かい筋肉で、背骨を動かすというよりは、安定や制御が主な役割です。腹横筋とも連動して体幹を支えます。
◆ 多裂筋がうまく働かないと?
腰の不安定感につながります。腰痛にも大きく影響することがいくつかの論文でもでています。いわゆる一般的な「腰痛」の方は、多裂筋が薄くなったり、うまく働かなかったり、萎縮したりしています。
また、脊柱の両側にある多裂筋のうち、左右どちらかが弱くなると、そちら側が腰痛になったりお尻の高さが異なったり、骨盤のねじれにつながることもあります。
◆ アプローチ
多裂筋がうまく動かない=背骨の細かい動きが苦手 のことが多いので、背骨の動きを出せるようなアプローチが有効です。
体幹をひねる動きで動きやすくなるので、背骨の動きをだすアプローチができると良いですね。
もし家でのアドバイスをするなら、
・仰向けで膝をたてたブリッジで、背骨を一つずつ動かす練習
・四つ這いで片手と片脚をあげて体幹をキープ
などのエクササイズがおすすめです。背中の筋トレなどは、あまり効果的ではないかもしれません。

4.骨盤底筋
◆ 骨盤低筋の位置
骨盤の底に広がる筋群です。恥骨・尾骨・坐骨を結ぶ形でついています。


◆ どんな働きをする?
- 他のインナーマッスルと連動して体幹を安定させます
- 排泄や婦人科機能にも関与しています
- 横隔膜といっしょに、呼吸に関与しています
→息を吸った時:肺に酸素が入り横隔膜は下がる・骨盤底筋群は伸びながら下がります。この時、骨盤底筋は力が抜けて下がるのではなく、横隔膜からの圧に対して押し返すように働きます。それによって腹圧が安定して姿勢も保てています。
息を吐いた時:横隔膜が上がる・骨盤底筋群は縮みながら上がる
◆ 骨盤底筋がうまく働かないと?
- 主に、妊娠・出産・加齢・肥満・姿勢不良などによって弱くなる筋肉です。骨盤の不安定感や、尿もれなどの悩みにつながります。
- 腹圧が保てず、下半身不足の原因にもなる
- 呼吸が浅かったり、肩呼吸していたり、ちょっとした崩れが起こることがあります
◆ アプローチ
尿もれをはじめ、腹圧がなかなかうまく高められず姿勢が安定しないなど、骨盤底筋が弱くなっている方も多いです。海外では触診を行ったり実際に触れてマッサージすることもあるのですが、日本ではなかなか難しいですよね。
一時期「膣トレ」という言葉もありましたが、骨盤底筋群は「力の入れ方」を知ってもらって、普段の生活の中で使う感覚を取り戻していただくことが何より重要です。力を入れようとすると、お尻の筋肉や脚の筋肉などアウターマッスルを使いやすいので、骨盤底筋群を意識するところからお伝えするのが効果的です。
椅子の上に細く丸めたタオルを中心に縦において、その上に座り、そのタオルを骨盤の底の筋肉で挟むような筋トレが有効と言われています。難しいですけどね。
5.横隔膜
◆ 横隔膜の位置
横隔膜も、面積が大きい筋肉です。「膜」とありますが筋肉ですね。
大きく3箇所の部位に分けてついています。
- 胸骨部:胸の骨、胸骨の先(剣状突起)についています
- 肋骨部:肋骨下部の内側に付着していて、腹横筋ともくっついています
- 腰椎部:腰の筋肉(大腰筋や腰方形筋)、腹横筋と筋膜を通してつながっているとされています

◆ どんな働きをする?
呼吸に関連する筋肉であることは知られていますね。
安静時の呼吸の70~80%を担っていると言われています。
※思い切り吸って思い切り吐くなど、努力性呼吸の場合は腹筋なども関係してきます。
息を吸う時に横隔膜は下がり、吐く時に上がります。
腹式呼吸は、肺にたくさん空気を入れ、横隔膜をたくさん下げることでお腹が膨らんで見える呼吸です。
横隔膜が正しく働いてくれることで、腹圧が調整でき、腰椎の安定性も高まります。
姿勢保持や胸郭と骨盤の強調にも関与しています。
◆ 横隔膜がうまく働かないと?
- 浅い胸式呼吸になることで、肩や肋骨回りが硬くなりやすくなります。
→そこから、肩や首のコリなどにもつながります - 腰痛の肩の横隔膜は薄くなっている(働きにくくなっている)場合がある
- 他のインナーマッスルとの連動がくずれウエストもなくなる
横隔膜がうまく働いていないと、肩こりや腰痛につながり、お腹周りの太さやウエストにも影響があります。
なかなか触りにくい部分ではありますが、体の中心にある重要な筋肉なので、働きは知っておきたいところです。
◆ アプローチ
- 横隔膜や肋骨周囲のリリース
- 腹式呼吸の練習
先日、触診会で練習した横隔膜の触り方とリリース方法です↓
インナーマッスルは外側から触りにくい部位ですが、その場所と働きを知っておくと、他の筋肉との関連や呼吸との関連のアドバイスのしやすくなります。
ぜひ参考にしてください。


